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| - | | - | - | pookmark | 昨年の記事
いまさら決算公告
「何をいまさら」という話だが,決算公告の話。
新会社法施行後も,決算公告を行わない企業が多い,
という実態は,全く変わっていないようだ。


会社法第440条では,
「株式会社は,法務省令で定めるところにより,
 定時株主総会の終結後遅滞なく,貸借対照表
 (大会社にあっては,貸借対照表及び損益計算書)
 を公告しなければならない。」
と規定している。


そして,会社法第976条第3項では,
「この法律の規定による開示を怠ったとき」は,
取締役等に対し,100万円以下の過料に処すと規定している。
公告とはまさに開示であり,440条の規定も含まれる。


同法同条第1項の規定では,
「この法律の規定による登記をすることを怠ったとき」も,
同じように100万円以下の過料となるのだが,この場合は,
簡易裁判所から過料が命じられることもある。


取締役が変更した際などは,登記の変更が必要となるが,
順法意識の薄い会社などではうっかりと忘れてしまうもの。
金額的には数万円で済むが,損金算入できないし,
余計な出費だから,登記懈怠は気をつけたいおきたい。


ところが,決算公告を懈怠しても,おとがめはない。
同じ法令根拠であるにも関わらず,
なぜ決算公告懈怠が放置されているのだろうか?


法務当局では,この件については“沈黙”を守っている。
法務省も裁判所も職員の数が足りないから手が回らない,
という理由が現実なのかもしれないが,
処罰できない法令であれば,なくしてしまえばいいだろう。


役人という種族は,法令を作るのは朝飯前だが,
「法令を廃止する」ことには行動を起こさない。
前例主義に染まった体質はどうしようもない。


ところで,国の財政は危機的な状況。
基礎的収支の黒字化さえメドが立たなくなった今,
税収の確保は喫緊の課題になっている。
審議拒否の中で,国会では何ら議論はされていないけどね。


新たな増税が難しい現状であれば,
既存の法令の枠組みの中で,
税収を増やしていくのも1つの方法だろう。


以前にも当ブログで,
刑法の罰金刑や交通反則金の引き上げを提案したが,
決算公告の懈怠についても,積極的に取り締まり,
どんどん過料をせしめていけばいいだろう。


全国の9割以上の会社が決算公告を懈怠しているとされ,
全ての会社が過料の対象となれば,
それなりの税収になるのではないか。


ただ,それではあまりにもネガティブすぎる。
本来,会社自身が積極的に決算書を開示すべきなのだ。
会社はそれ単独で経済活動を行えるものではなく,
債権者,取引先,消費者,従業員などに対して,
会社の財政状態・経営成績を正確に報告し,
末永く付き合っていく姿が理想的。


ところで,なぜ会社(特に中小企業)は,
決算公告を行わないのか。理由は以下の4つぐらいか。
1.お金がかかる
2.赤字だと金融機関がカネを貸してくれない
3.黒字だと取引先から値引きを強要される
4.そもそも会社法を理解していない


まず1番目だが,旧商法の時代には,
決算公告は官報に掲載するか,
日刊新聞に広告として出稿する必要があった。


新聞の広告掲載代は非常に値が張るため,
官報に掲載するのが一番安く済む方法だった。
中小会社の場合は,貸借対照表の公告のみなので,
2枠の大きさで十分かと思われる。
その場合,掲載料金は59,126円となる。


中小企業の場合,約6万円の出費も痛いかもしれない。
基本的に,収益への貢献は一切ないわけだから…。
支払う必要がないのであれば,それで済ませたい,
という経営者の本音も理解できなくはない。


しかし,新会社法に切り替わって,
新たに,自社サイト等のネット上に決算書を掲載すれば,
それが決算公告としてみなされるようになった。


サイトを開設していなかったり,
電子公告の手続きが面倒な場合には,
代行してサイトに掲載してくれるサービスがあり,
官報よりも割安な料金を設定している。


全く手間をかけず,無料で済むわけではないが,
決算公告にかけるコストが下がったことは間違いない。
だから1番目の理由はあまり重要性がなくなった。


次に2番目の問題だか,これもあまり理由にはならない。
というのは,銀行など金融機関からの借入金がある場合,
定期的に計算書類等の提出を求められるからだ。


お金を貸す銀行等も,貸倒のリスクを負っているわけで,
貸出先の経営状態には常に関心を持っている。
計算書類をベースに決算公告をするわけだから,
金融機関側ではその内容は既に承知済みの場合が多い。
だから赤字を理由に決算公告を拒むというのは,
単なる言い訳に過ぎないわけだ。


さて,3番目の理由は,根が深い。
下請けの中小企業の場合,
取引先の大手メーカーからの値引き要請は厳しい。
2割,3割の値下げ要求は当たり前だ。


ただ,利益をたっぷり溜め込んでいるという理由で,
値下げを要求してくるわけではないだろう。
というのは,発注側でも無理を承知でお願いするからだ。


逆に言えば,下請けに利益があろうと,なかろうと,
値下げ要求は絶え間なく続けられるはず。
赤字だからといって,下請けイジメをやめるわけではない。


仮に儲かっている場合でも,利益を圧縮するのが通例。
実効税率約4割の税金負担が増すからだ。
そのため,決算期末が近づくと,
無駄なものを購入して,費用をかさ上げしたりする。


ただ,こういう経費の使い方をする会社は,
長い目で見て経営は安定しないけどね。
内部留保が厚くなっていかないからだ。


それに,税金を支払うよりも,
経費で落とした方が「得」なんていう発想が,
企業のあり方として問題だと思うけどね。
納税も広い意味で,企業の社会的責任でしょ。


しかし,税金はしっかりと納めつつも,
“見た目上の利益”を圧縮する方法はある。
それがここ10年で導入された新しい会計基準である。


大会社や上場企業など,会計監査人設置会社では,
それら新しい会計基準の適用は必須となっているが,
公認会計士による監査が不要な中小会社では,
会計基準の存在すら知らないのが実態だろう。


中小企業が採用している会計処理は,
そのほとんどが税法に依拠したもののはず。
伝票処理を含めて,税理士事務所に委託しており,
税務調整の少ない会計整理が多くなる。


一般の人には想像しにくいかもしれないが,
「会計」と「税務」は全く別の世界。
会計上の費用であっても,損金算入が不可なものもあり,
その「差」が広がれば,広がるほど,
申告書の作成も手間になってくるのだ。


ところが近年導入された退職給付会計や減損会計などは,
実払いしたり,資産を実際に処分しない限りは,
損金算入が認められない。


そのため,税金負担は変わらないものの,
見た目の業績は悪くなる。
もっとも,経理の専門家が見れば,
税引き前当期純利益の額に対して,
実効税率以上の法人税等が計上されることから,
意図的に否認して費用計上したことはすぐにバレる。


しかも,ここで税効果会計を適用すれば,
法人税等調整額で加算分を繰延資産に計上できるから,
当期純利益は実効税率分で仕上がってしまう。


しかし,ここでも裏技があって,
繰延税金資産の回収可能性の判断において,
将来の回収見込みがないと判断して,
資産計上を見送るという「手」も使える。
すると,純利益は薄まったままになる。


かつては,利益留保性引当金を引当てたり取崩したりして,
頻繁に利益の操作が行われていた時代があった。
昭和57年の旧商法改正以降は禁じられたが,
その引当金を残したままの古い会社も存在したりする。


利益留保性の引当金の費用処理は絶対にやってはいけないが,
退職給付会計や減損会計は,その内容は難解だが,
積極的に行っても何ら問題はないし,
見た目の利益を薄める効果は抜群である。


一般に上場会社は損失の拡大を嫌うから,
減損処理に抵抗して,会計士と対立したりするが,
中小企業は少数株主の存在が気にならないから,
会計上の費用処理を先取りして,
将来の費用負担を軽減しておくと,
長い目で見て経営が安定するはずである。


もしかしたら,何を書いているのか全然理解できない,
という人がいるかもしれない。
勿論,一般人で分かる方がいれば素晴らしいが,
例えば,これから起業して経営者を目指す人であれば,
これぐらいのことは分かって当然だと思う。


そこで4番目の理由になるのだが,
そもそも会社法の立法の精神を理解しないで,
会社を作ろうなんていう安易さが間違っている。


経理は税理士などに任せておけば済む話ではない。
多くの税理士は申告書を作成するだけで,
経営のアドバイスなどはしないはず。


計算書類等をなぜ作成するのか?
株主総会の承認事案であり,また,
申告書の添付書類だから作成するのではない。
計算書類等の数字が経営分析のベースになるためだ。


経営分析をしない経営者なんてありえないはず。
勿論,経理の専門領域まで精通する必要はないが,
中長期にわたっての利益計画を理解できないようでは,
継続企業体を作り上げることは無理だろう。


そういう会社は長続きはしないし,結果的に,
利害関係者を不幸にさせて終わるだけである。
決算公告から話は大きくはずれてしまったが,
会社の価値を上げていくという意味では本質は同じ。


つまり,堂々と決算公告を行える会社こそが,
社会の中で信頼されるということだ。



| 企業会計・情報開示 | 17:32 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark | 昨年の記事
嵐の予感?
2008年4月からは四半期報告制度が導入される。
これは随分前に決まったことなのだが,
私も現場を離れて2年が過ぎてしまい,
間もなく導入されるという実感がなくなってしまった。


さて,今日の日本経済新聞朝刊15面の記事から。
システム開発会社のディーバが上場企業を対象に,
四半期報告制度への対応状況を調査したところ,
社内対応を完了していると回答した企業は,
わずか5%だったという。


こりゃ酷い結果だと思うけど,
実際,現場の負担は大きいと思うよ。
開示量は半期報告書より少なくなるけど,
決算期末日から,45日以内の開示義務が厳しい。
半期報告書だって3ヶ月以内だったわけだし,
一気に半分だからね。


しかも,次からはXBRL形式で開示になるわけでしょ。
HTML形式と同様,フォーマット変換の手間は同じだが,
EDINETタクソノミへの組替などが出てくる。


ま,一度環境を作ってしまえばいいのだろうが,
勘定科目の追加があるとやり直しが必要だし,
何かと神経を使うところでもある。


「対応完了」のほか「対応実施中」を含めても,
10%にとどまっているというのは驚いた。
「検討中」が77%と大半を占めている状態で,
各上場企業の経理担当者は相当苦労するはず。


というのは,45日以内開示を達成するため,
どんな対処方法を取るかという質問に対して,
「時間外勤務」と答えた企業が37%にのぼった。
結局は,「人力」に頼るしかないわけよね(苦笑)。


しかし,ミスなくEDINETアップまでは可能なのか。
非常にプレッシャーがかかることは間違いない。
というのは,EDINETは一度登録してしまうと,
差し替えが絶対に出来ないためだ。


1月下旬,川崎市の「テラメント」というキチガイ会社が,
トヨタ自動車など6社の株式を51%取得したとして,
EDINETに大量保有保有報告書を登録した事例があった。


金融庁は虚偽記載として,訂正報告書の提出を求めたが,
キチガイは聞く耳を持たず,いまだにアップされたまま。
現在の金融商品取引法では,一度提出された報告書は,
原則5年間,絶対に削除されないようになっている。


そのため,有報などの記載に誤りがあった場合は,
訂正報告書を提出して,誤った部分を直す必要がある。
で,やはり経理担当者としてみれば,
訂正報告書を提出するって,格好悪いわけ。
ずっとネット上に残っちゃうわけだしさ。
それに提出にあたって,社内手続きも面倒。


だから,EDINETへ登録する最後の段階は,
マウスをクリックする際,ドキドキするよ(笑)。
今はあのプレッシャーからは解放されたけど,
これからの担当者は大変だろうな。


3月期決算の会社では,8月14日が最初の関門。
他人事ながら,「暑い夏」になりそうだねえ…。
それとも,冷や汗で関係なかったりして。


時間を焦って四半期報告書を作成したことにより,
あちこちミスが見つかったりする会社が増えるかも。
しかも,XBRL形式だと不整合個所を見つけやすいし。
2008年度は,訂正報告書の嵐となるような予感が…。



| 企業会計・情報開示 | 10:46 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark | 昨年の記事
国際会計基準による財務諸表を,米国来年から導入
米国証券取引委員会(SEC)は15日,
米国で上場する外国企業に対して,
国際財務報告基準(IFRS,新国際会計基準)に準拠した
財務諸表の提出を認めることを正式に決めたようだ。


SECでは,7月3日にIFRSにより作成した財務諸表を,
受け入れるための規則改正を行う提案を行っていた。
同提案では、国際会計基準審議会(IASB)の作成した
IFRSによる海外企業の財務諸表について,
米国GAAPに調整することなく受け入れることとし,
関係の様式や規則等の改正案を提案していた。


これにより,欧州で既に定着し,
中国やアフリカなどの新興企業などが採用している
IFRSが事実上のデファクト・スタンダードとして,
国際会計上利用されることが決まった。


個人的には感慨深いものがある。
国際会計基準(旧IAS)を意識するようになったのは,
1995年のとき。旧大蔵省証券局企業財務課が,
国際会計基準に興味を持ち始めた頃だ。


当時は「会計ビッグバン」などと騒がれた。
税効果会計,退職給付会計,金融商品会計基準が,
矢継ぎ早に日本に導入されていったからだ。


税効果会計は自己資本増強に役立つ会計処理だが,
退職給付会計は一気に負債を増やすことになった。
また,当時株式市場が低迷していた我が国では,
金融商品会計による有価証券時価評価によって,
マイナスの評価差額金でさらに自己資本が減少。


ダメを押したのが税効果会計の厳格化。
会計制度導入時は全額繰延税金資産に計上したものの,
その後の評価性引当額の強制計上によって,
取崩しによる税金負担額がさらに資本を傷めた。


特に,銀行は竹中平蔵の狙い撃ちにあって,
多額の繰延税金資産の取り崩しを強要されて,
りそな銀行などは息の根を止められた。


2000年から2003年まで企業の自己資本が目減りしたのは,
業績云々というよりも,会計処理制度の変更に
左右される場合が多かった。


私は早くから新会計基準の調査に取り組んでいたが,
ここまでのインパクトがあるとは予想していなかった。
単に会計処理の変更だけではなく,
金融危機と連動したことが大きかったわけだが,
しかし,資産・負債・資本のあるべき姿への調整は,
これで終わったわけではない。


金融商品会計基準にしたって,
国際的な流れは,“全面時価評価”である。
我が国の場合は,資産の時価評価にとどまっているが,
国際会計基準では負債までも時価評価する方向。


日本では国際市場からの“孤立化”を恐れ,
ようやく“国際並み”の会計基準整備を加速している。
その代表がリース会計基準だろう。


我が国では従来,所有権移転外ファイナンスリースは,
「例外処理」としてオフ・バランスが認められており,
これが事実上,本則処理として定着してしまっていた。


日本の会計基準設定を行う企業会計基準委員会(ASBJ)は,
ようやくリース資産のオン・バランス処理を強制する
改定リース会計基準を2008年度から導入する。


しかし,まだ国際基準並みとのギャップは存在する。
減損会計や棚卸資産の低価法導入など,
徐々に埋まってはきているものの,
細かいところではまだギャップがある。


特に,包括利益の概念はどうなるのだろうか。
見かけの利益の話なので,個人的にはどうでもいいのだが,
日本では抵抗する勢力が意外と多い。
株主資本を充実させるっていう観点からみれば,
包括利益など全く気にする必要はないと思うのだが…。


米国でIFRSを使って来年から上場を認めるとすれば,
サブプライム問題で揺れ動く米国株式市場も,
新興国の企業の上場が相次いで,
活況していく可能性も出てくる。


一方,日本ではどうか。
ドイツのフォルクスワーゲンは今月14日,
東京証券取引所に上場廃止を申請した。
理由は「コストがかかる割に取引量が少なかった」から。


海外企業を呼び込めばいいという話でもないが,
コストがかからずに,取引量が多い市場を,
なぜ日本は目指そうという意欲が出てこないのか。


確かにIFRS並みの基準を導入したからといって,
ただちに株式市場が活況するものでもないが,
少なくとも企業業績の比較可能性を保つことは,
当然あるべきベースとなるはず。


しかし,その段階でまごついているから,
ますますそっぽを向かれてしまうわけだ。
東証上場の外国企業数がピークだったのは1991年。
バブル崩壊が始まった年だ。


現在はその1/5の規模にまで縮小している。
日本の経営者らはどう考えているか分からないが,
明らかに日本は国際会計的には孤立しつつある。


一企業の「見せかけの利益」だけを守るなんて,
なんと空しいことではないか。
日本特有の事情もあるし,
海外の真似をすればいいものでもないが,
今は「同じ土俵」に立つことが重要だろう。


本業さえ儲かっていれば,多少の基準変更なんて,
ほとんど影響を受けないはずである。
一時期の利益よりも,市場からは見向きもされなくなる,
という事態になることの方がよほど恐ろしいはず。


2011年という期限は設定されているが,
前倒しする気概を持って,
会計基準の整備を急ぐべきだろう。



| 企業会計・情報開示 | 19:10 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ちょっと古いニュースだけど,
藍沢証券が保有する絵画とゴルフ会員権を無断で売り,
計約2億1千万円を着服したとして,
同社の元経理部マネジャー・鈴木光徳容疑者を,
警視庁捜査二課が業務上横領の疑いで逮捕した,
っていうのがあった。


鈴木容疑者は,藍沢証券の経理部に在籍していた頃,
固定資産を管理する立場にあったという。
ゴルフ会員権は固定資産ではなく,長期投資だが,
絵画などは有形固定資産(備品)に該当するため,
その資産の中身を十分把握していたと思われる。


ただ会社によって異なるとは思うが,
通常,絵画やゴルフ会員権は,
秘書や総務が管理するものであり,
経理はあくまでも帳簿の管理しかやらない。
内部牽制上,経理が資産を自由に,
動かせないようにするのが原則。


なぜ,現物が持ち出されたのかは不明だが,
会社からバレたということは,
帳簿に記載されている資産と推察される。


話は違うけど,実際には帳簿にない絵画とかあるわけ。
例えば,経営者同士や芸術家などとの付き合いの中で,
絵画を頂くということもあるのだが,
これは「無償取得資産」として処理する必要がある。
しかし,会計処理をしないままのものが稀にあったりする。


タダで貰った場合,会計処理が不要と思うかもしれないが,
資産価値が20万円以上で時価評価される場合は,
会計上は備忘価格(1円)を付して資産計上するし,
税務上は,時価相当額を課税所得に加算しなければならない。


絵画の場合,画家によって1号何円とか相場表があって,
一応時価評価ができるようになっているわけ。
タダで貰っても,1000万円の価値があるならば,
税務申告では別表四で加算して課税所得を増やし,
以後,別表五(一)で,利益積立金を増やしておく。
そして,実際に売却などの処分をしたときに,
減算するというわけだ。


会社の事業形態にもよるけど,古い企業であれば,
この無償取得資産が多く,管理は結構面倒だ。
しかも,税務上は否認されることになるから,
多額の税金を前払いしている状態であり,
金利を考えれば,資産価値の減少につながっている。


芸術的な価値は別としておいても,
無償取得資産を保有するのは,
会社の経営上は,あまり良いことではない。


ところで,もし会計処理をせず「簿外資産」とした場合,
税務上の問題は別として,所有権がハッキリしないため,
例えば,担当者が勝手に処分したりしても,
会社で分からない場合だって出てくる。


その意味で,会社が絵画やゴルフ会員権を保有する場合,
資産管理は徹底しておく必要があるのだ。
藍沢証券がどのような資産管理をしていたか不明だが,
特に経理部の人間が勝手に持ち出せる体制は,
非常にお粗末といってよいだろう。


ところで藍沢証券といえば,
最近,トレーダーの間で噂になっている“事件”で,
10億円ほどの損失を出した証券会社だ。


その“事件”とは,株取引マニアなら誰でも知っているが,
東証マザーズ上場「OHT」を巡る株取引である。
OHTは2005年末ぐらいから,どんどん値を上げていき,
ライブドアショック以降もジリジリ値を上げ,
昨年の年末近くには100万円台を突破した。


今年の5月中旬までは,120万円台で推移しており,
瞬間的には150万円を狙う値動きもあったのだが,
なぜか,今年の5月15日以降,大暴落。
14万円台まで落ち込んだ日があったころから,
なんと数日で,1/100まで株価が萎んだ。


こんな株の値動きは,あまり見られないのだが,
OHT株がいわくつきだったのは,
発行済株式に対する信用買い残が,約4割もあったのだ。
これは異常に高い水準といえる。


信用買いが支えていた高値であったため,
この株の値段が下がれば追証となるが,
あまりに急激な下げだったため,
回収がほとんど不能になるはずだ。


藍沢証券では,6月8日,
顧客9名と結んでいた信用取引において,
一部の銘柄の急激な下落に伴い,
損金未入金約10億円が発生したことを発表。


どの銘柄で損失を出したかは明らかにしなかったが,
OHT株であることは間違いないのだろう。
顧客が破産手続きを取るのか,逃亡するのか,
あるいは自殺するのかはどうでもいいことだが,
証券会社としての責任はどうなるのか。


個人でも株の取引が日常的になってきたが,
証券会社は口座獲得だけに目が行って,
口座開設の十分な確認や,
取引内容のチェックなどをやっているのだろうか。


特に,信用買いは担保が十分でないため,
とりわけ個人が手を出すには危険すぎるわけだし,
回収が絶対に無理な取引などの監視が,
ある程度必要なのかもしれない。


今回のOHTの値動きは,あまりに不自然だった。
数年前まで,数十万円だった株価が,
はっきりした業績の根拠もなしに値が吊り上げられ,
そして一瞬にして吹き飛ぶという取引は異常。


仕手筋が入ったことはまず間違いないのだが,
彼ら自身も相当な火傷を負ったはずであり,
それを承知で吊り上げていたとしか思えない。


吊り上げたOHT株を担保に,他の大きな取引で,
儲けようとしていたとも推察されるが,
これは金融庁の調査が待たれるところだ。


証券会社は一応,当該事案の「被害者」だが,
中堅証券会社の10億円という損失は小さくない。
会社が潰れるのはそれで結構だが,
金融不安の引き金にもなりかねないわけで,
顧客の管理はしっかりしておくべきだろう。


藍沢証券で起きた2つの“事件”から,
証券会社のモラルやコンプライアンスが,
非常に気になる最近である。



| 企業会計・情報開示 | 10:01 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
人材派遣事業者と消費税
今日の日経新聞朝刊38面から。
全国の国税局が2006年度に査察で摘発した脱税事件は,
221件で,脱税総額は加算税を含め約304億円だったことが,
昨日、国税庁のまとめで分かった。


告発件数と脱税額は法人税が最多となるが,
消費税の告発件数が前年度の2.3倍に増えたようだ。
中でも,業種別では,人材派遣業が最も多い。


なぜ,人材派遣業で消費税の脱税が多いのか?
これはまず,消費税の仕組みを理解する必要がある。
前にも書いたと思うが,個人と法人とでは,
消費税に対する取扱いが違う。


個人の場合,商品やサービスの本体価格に,
消費税率5%を上乗せさせるため,
消費税の課税は,損した気分になるのではないか。


ところが,法人の場合は全く逆なのだ。
例えば,売上が1,000(全て課税売上対象)とすれば,
当該仮受消費税額は,50となる。


一方,商品仕入が800(全て課税仕入対象)とすれば,
当該仮払消費税額は,40となる。


消費税の計算は,非常に単純に言ってしまえば,
課税売上から,課税仕入れを控除した額となる。
経理的にいえば,仮受消費税と仮払消費税を,
相殺した形になる。


つまり,上記の例でいえば,
「50(課税売上)」マイナス「40(課税仕入)」,
イコール「10(納付すべき消費税額)」となる。


個人と法人とで消費税の受け止め方が全く違うのは,
個人では支払う取引についてそのまま課税されるが,
法人では,まずは売上が課税のターゲットとなり,
必要経費分(支払った額)だけ控除できる形に,
なっているためである。


ここで,注目すべきなのは,仕入れの場合,
課税対象額が多ければ,支払う消費税額が少なくなる,
という仕組みなのである。


だから,売上よりも仕入の額が大きい会社,
すなわち赤字会社は,消費税額はマイナスになるから,
基本的には「還付」となり,お金が戻ってくる。
この還付制度を悪用し,わざと仕入れを多くして,
脱税をする会社もチラホラある。


そのため,非課税仕入の取引が多い場合,
それだけ売上から控除される金額が小さくなるため,
支払う消費税額が多くなってしまうのである。


売上で非課税対象となるのは,受取配当金,
受取利息ぐらいなものだが,
仕入(費用)側では,意外と非課税対象取引が多い。


その代表的なものが人件費である。
自社の従業員に支払う給料や社会保険料は,
通勤費などを除けば,全て非課税取引だ。


そこで,人材派遣業者の場合,
極端な例として,自社で全て派遣業者を抱えて,
仕入(費用)側は,設備投資や賃借料がなく,
全て人件費だった場合を考えてみよう。


上記の例と同じく,売上が1,000だとした場合,
仕入控除はゼロ,つまり仮受消費税の50を,
まるまる納付する必要があるのだ。


だとすれば,自社従業員で全て賄うのではなく,
他社からの「外注費(委託費)」として,
派遣社員を受け入れればいいのである。


これは経理をやっている人しか知らないだろうが,
委託派遣社員への対価,すなわち派遣事業者への支払いは,
課税仕入対象として認められるのである。


企業が派遣社員を活用するにあたって,
人件費の圧縮が目的だなんて意見がよく聞かれるが,
消費税を圧縮できるメリットについては,
取り上げられることはほとんどない。


人材派遣業者は,この仕組みを悪用する。
自社の社員をあたかも他のダミー会社の社員に見せかけ,
そのダミー会社に対する外注費として,
課税仕入対象とするのだ。


また,ダミー会社を消費税の非課税対象事業者となる,
売上高1,000万円以下の小規模会社にとどめ,
ダミー会社側の売上分も非課税にしてしまうなど,
手の込んだやり口もあるほどだ。


ただ,非課税取引にすると,支払う額が同じであっても,
消費税分だけ費用(損金)が少なくなるため,
利益が(課税所得)が大きくなってしまう。


この利益に対する法人税等の実効税率分の税金(所得割)が,
増えることになるから,まるまる消費税の脱税分が,
儲けになるわけではない。まあ,このあたりの話は,
経理の中でも,かなりマニアックな話になるが(苦笑)。


人件費と消費税の関係は,複雑だけど面白い。
例えば,上の方で,基本的に赤字会社は,
消費税は還付になるって書いたけど,
人件費の支払額が多い会社だと,仕入れ控除が少ないため,
赤字であっても消費税を支払うハメになるのだ。


でもそれは企業にとって決して理不尽なことではなく,
消費税全体の納付の仕組みから言って当然のことである。
「仮受消費税」は,あくまでもお客様から預ったお金。
利益と消費税は全く相関関係はないわけで,
元々利益を上げられない事業モデルに問題があるだけ。


消費税を脱税しようとする悪徳業者は論外だが,
企業はお客さまから預った消費税を,
きちんと納付するという姿勢は常に持つべき。
そうでなければ,いやおうなしに消費税を取られる,
個人が浮かばれない。



| 企業会計・情報開示 | 13:29 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
業績予想は「控えめ」がお好き
3月決算期の上場会社の大半が,
今日までに決算短信を提出するのではないか。
東京証券取引所の決算早期化に対する要請が強いため,
各企業は毎年ペースを速めざるを得なくなっている。
東証の目標は「月内発表」。つまり,3月期決算であれば。
4月中に短信を出せということ。


決算短信では当然,決算実績値に注目が集まるが,
一方,「次期の業績予想」に対する反応も強い。
決算値は,会計基準等に従って厳密に計算された数字だが,
業績予想は,簡単に言っていい加減である。
実際に携わってきた人間の言うことだから間違いない(笑)。


ま,「いい加減」って言うとちょっと語弊があるのだが,
そもそも「基準」となるものがこの世の中に存在しない。
算定はこうしなさい,っていう指針がないわけだから,
各社各様の考え方ではじき出しているわけだ。


また,業績予想は,トップシークレットのインサイダー情報。
だから,事前に短信を会計士に見てもらう場合でも,
業績予想の数字は空欄の状態で提出する場合が多い。
逆に,会計士も見たがらないし(苦笑)。


監査の対象にならない情報なので,
ホント,会社の独断で決められる数字なのである。
というか,短信以外にはほとんど出てこない数字だし。
業績予想っていうのは,東証が勝手に要求しているだけ。
法的根拠なんて何もないわけよ。


では,業績予想は具体的にどのように作られるのか。
ベースとなるのが,社内で策定した次年度予算である。
予算は3月中に確定させて,4月から執行を開始する。
だから,4月発表の際,この数字を流用する。


しかし,「ナマ」の数値で出すことはほとんどない。
予算策定は1月から2月にかけて行うが,
4月に入った段階で,予算に織り込んでいない事情が
出てきたりするわけで,その影響が大きければ,
調整が必要になったりする。


とまあ,ここまで正直ベースで作成されるわけだが,
最終的には経営層の恣意的な判断が介入してくる。
例えば,今期の経常利益が100億円だったとする。
そして,正直ベースの次期業績予想が120億円となれば,
あえて40億円削って,80億円としておくこともある。


これは,原材料の値上げが今後も続くと判断すれば,
予想よりも減益となってしまう可能性が高くなるわけで,
後で下方修正するのも格好悪いと考えれば,
あらかじめ低く目に見ておこうという心理が働くわけだ。


今日の日経産業新聞22面の「先読みマーケット」では,
この事象を「保守的な数字」と表現している。
そのまんまの表現なんだけど,正直ベースで作ったとしても,
結果的に「保守的」となってしまうこともある。


当該記事では,野村証券金融経済研究所の調査を載せていて,
金融を除く主要400社の経常増益率の期初予想は,
2006年3月期が1.0%,2007年3月期が1.7%だったそうだ。


これに対して,実績は2006年3月期が11.3%,
2007年3月期は現在発表が続いている最中だが,
期初予想を上回る企業が目立つとしている。


2006年3月期の実績では,約10%アップしたことになるが,
実は予算の策定と関係している部分もあるのだ。
予算作成は,各主管部から予算を上げてもらい,
ヒアリングの後,査定を入れて全体を策定する。


ところが,主管部では,ある程度余裕を持たせて,
予算を作ってくることがほとんどなのだ。
後から予算を追加する手続きは,面倒だからねえ。
また,消費税を織り込んで作ったりして,
5%がまるまる剥がれ落ちるということもよくある。


私の経験則から言って,10%程度費用が落ちるのが通例。
売上が予想通りだとすれば,10%の増益で仕上がってしまう。
だから,業績予想から実績までに10%の乖離が生じるのは,
私なんかは逆に「普通のこと」と思ったりしているわけ。


もっと細かいことを言うとね,「保留予算」っていうのを,
抱えている場合もある。これは大きな計画外事案が発生し,
多額の予算追加が必要な場合の原資としておく。


で,保留予算は費用として織り込むから,
これを使わずに済めば,そのまま増益となってしまう。
予算の策定そのものが「保守的」になってしまうと,
経営層の判断とは関係なしに,業績予想との乖離が生じる。


ところで会社側の業績予想とは別に,
業界アナリストによるいわゆる「市場予想」なるものがある。
会社予想と市場予想と株価の関係について,
今日の日経金融新聞20面の「スクランブル」で,
なかなか興味深い結果が掲載されている。


大和総研は金融を除く主要300社について,
2007年3月期の経常増益率を9.6%と予想していたという。
同時期,会社予想まのとめでは増益率は1.5%にとどまる。
しかし今年の結果を見ると,増益率の実績値は,
5月9日時点で10.7%となり,「市場予想」の勝ち。


アナリストもバカじゃないから,
会社予想なんか鼻から信用しないで,
独自の分析で予想をしているわけだ。
会社の中身をしっかりつかめば,今後1年間の業績など,
かなり読み解くことは可能だろう。


ところが昨年は,控えめな会社予想が続出したため,
一時株式相場が急落した。ライブドアショックの
後遺症もあったと思うが,会社予想を単純に鵜呑みにした,
アホ個人投資家が増えたから,という指摘もある。


ただ,今年も会社予想が控えめの中で,
株価が下落する形跡はなく,むしろ上げの方向だ。
アホ個人投資家が少なくなったか,学習能力が出てきたか。


日経金融では,会社予想と市場予想と株価の関係について,
なかなか面白結果を載せている。


まず,期初の会社予想が市場予想を下回ったものの,
1年後の実績で市場予想を上回った銘柄の株価がどうなったか。
109銘柄のうち46銘柄がこのパターン該当したが,
株価の平均上昇率は16%を上回ったという。
代表的な銘柄が任天堂で,株価は2倍に膨れ上がった。


次は,会社予想が市場予想を上回っていたものの,
結果が会社予想を上回った銘柄の株価。
該当する銘柄は23あったが,平均騰落率は11%にとどまった。
一時的な増益効果とみなして,株価への反応がないのか。
それともアナリストの予想がヘボだったのか(笑)。


もう1つのパターンは最悪。期初の会社予想が,
市場予想よりも控えめだったにもかかわらず,
結果として実績が未達となった銘柄の株価。
該当する23銘柄の平均騰落率はマイナス17%超となっている。
代表的なのが日東電工で,株価はほぼ半分になったようだ。


こう見ると,会社予想も市場予想も当てにはならないが,
結果的に予想を裏切れば,株価は下がるという結果は,
鮮明に出ているようだ。


ハッキリ言えるのは,来年のことなんて誰も分かりはしない。
言い訳がましいかもしれないが,どうしても統制の効かない
支出は出てくるものだし,棚から牡丹餅のように,
意図しない売上が出てくることだってある。


それでも予算どおりに粛々と業務の計画を進捗させていく。
真っ当に仕事をしていれば,結果は自ずとついてくると,
信じていくだけのことで,後は投資家が勝手に判断すればいい。



| 企業会計・情報開示 | 13:11 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
減価償却制度の改正と企業業績の見方
平成19年度税制改正によって,減価償却制度が大きく変わる。
「減価償却費の全額損金算入」は産業界にとって,
長年の悲願であった。欧米では当然となっている全額損金が,
今まで日本で認められなかったのは,
旧大蔵省の強大な権力が1つの要因だったのだろう。


しかし,橋本龍太郎の怒りを買った旧大蔵省は,事実上解体。
証券局が「金融監督庁」として内閣直轄に分離させられ,
名称も「財務省」へ変えられてしまった。


そしてここ数年,主税局のベテランたちの異動があり,
発言力がどんどん弱まってきたのではないか。
また,2004年に山中貞則が死去して以降,
最後の聖域と呼ばれた自民党の税制調査会も,
除所に力を失っていき,政府主導の税務施策が
行えるようになってきたことが最も影響したか。


「税金の先取り」が税務当局の従来の使命だったが,
それが国際競争力の低下を招いたことは明白な事実で,
遅きに失してはいるが,大いに反省すべきだろう。


ところで,新制度だが,来期の企業業績の見方について,
いろいろと混乱が生じることが予想される。
新聞記事を読み解く形で,そのあたりの話でも。
まずは,3月29日付日経新聞朝刊15頁の記事から。


企業は取得した固定資産を,税法上損金算入できる
 95%までしか償却していないことが多い。



「多い」という表現は,全ての企業が95%で償却を
止めているわけではない,という意味である。
当該記事の最後の方に,全額償却している三井化学や
花王が取り上げられているが,これら企業では,
95%を超える部分について,損金経理をしつつも,
税務上(申告書で)否認して多く税金を前払いしておく。
これを有税処理という。


この場合は,当該償却資産を除却したときにはじめて,
否認(加算)しておいた金額が容認(減算)に回るため,
課税所得が減り,法人税の支払額は小さくなるわけである。


また,税務署に届け出て認められた償却資産であれば,
備忘価額(1円)まで償却を進めることができる。
この場合は,損金経理と同時に損金算入できるため,
会計と税務が一致することから,法人税の調整は発生しない。


企業によって様々な会計・税務処理を行っていることから,
「全て」ではなく,「多い」という表現になるわけだ。
実際には,95%償却(損金算入)しておき,
残存価額5%を資産計上したままにしておくのがほとんど。


設備を多く抱える企業では,残存5%分の資産の額が大きい。
現在,日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会から,
「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」が,
公開草案としてリリースされている。


当草案によれば,既存資産については残存簿価を
5年ずつの均等償却することが妥当としている。
一方,一括費用処理は,減損会計基準の適用を
受ける場合のみ,認められるとされている。


ところが,当該記事によれば,三菱ガス化学が前倒しで,
2007年3月期で特別損失処理を考えているようだ。
来期以後,5年間の償却負担を嫌ってのことだが,
今期の業績が良い見通しならば,一括償却をやりたくなる。
これは監査法人の対応が注目される。


ところで当該記事では,最後に次の文章で締めくくっている。


三井化学や花王など以前から有税で全額償却している企業もある。
 その場合は利益への影響はなく,税負担だけが減少する。



これはあくまでも,有税償却分を将来減算一時差異と認識して,
繰延税金資産に計上しているっていう前提の話ね。
例えば,当該一時差異について,評価性引当を行えば,
その分は繰延税金資産に計上できなくなる。


となると,当該一時差異が減算されて解消された場合,
法人税の支払額は減るものの,もともと繰延税金資産に
計上されていないため,法人税等調整額は変わらない。
結果的に,利益は増えるのである。


上記記事において『利益への影響はなく』という表現は,
正確に言えば,『法人税の支払額が減少する一方,
繰延税金資産が取り崩されて,法人税等調整額が発生し,
お互いが相殺しあって,利益に変わりは無い』となる。
つまり,評価性引当を行っていない前提となる。


新聞記者は詳しい仕組みを分かった上で省略しているのか,
それとも誰かの見解をそのまま記事にしているのか不明だが,
減価償却は税効果会計とセットで考えないと,企業によって,
利益の出方が違ってくることに注意が必要なのである。


となると,評価性引当の額が大きい企業は,
減価償却の損金算入のメリットが受けられないことになる。
このあたりの事情を説明しているのが,
4月17日付日経金融新聞20頁の「スクランブル」。


「償却費負担が増えるため会計上の利益が減る」
 という誤解も生じているようだ。



このくだりは誤りだろう。というのは,
95%で償却を止めている会社がほとんどなので,
毎年1%分の費用が計上され,税効果会計の調整もない。
当然,当期純利益の減少要因となるのだ。
誤解しているのは,記者自身ではないのか。


ただ,この点は企業が自らを置く立場によって評価が分かれる。
 つまり,従来から償却費を積み増し,
 課税所得も十分に上げている企業は,
 新たな費用負担はそれほど発生しないかわりに
 税務メリットが大きい。



『従来から償却費を積み増し』という部分は,
おそらく三井化学や花王などのように,既に全額償却を
行っている企業を想定しているだろうか。
であれば,確かに費用不負担は発生せず,
課税所得だけが小さくなり,法人税の支払額は少なくなる。
しかし,これは一部の企業に限られる。


細かい点を言えば,法人税の支払額が少なくなるから,
その分だけ利益が増えるわけではない。
有税償却分を将来減算一時差異として,
繰延税金資産に計上していた場合には,
同額が法人税等調整額のプラスで効いてくるため,
利益としては変化はないのである。


そして,次の記事の文章が今回の税制改正の中で,
最も気をつける点を示唆している。


しかし,過去の繰越欠損が多額に上るなどで税金を
 それほど払っていない企業は恩恵は少なく,
 償却費負担がのしかかるばかりだ



課税所得がない,つまり多額の繰越欠損金を抱えていると,
減算効果のある償却費の認容が全く意味を持たなくなる。
その恩恵を受けられるのは,課税所得が発生してからの話だ。
しかも,7年間という期限切れの前に,
課税所得を発生させられることが必須条件となる。


繰延税金資産の回収可能性の判断で,
重要な繰越欠損金を抱えている会社は,
ほとんどが評価性引当となり,繰延税金資産の計上は不可。


新しい会社計算規則の個別注記表では,
税効果会計の注記が新たに盛り込まれ,
評価性引当額の開示が要求されるようになった。


この金額が今後見込まれる税引き前利益よりも多額の場合,
その企業は,税務メリットはなんら受けられないことを
意味している。勿論,税効果会計の開示は,
従前より有価証券報告書で記載されている。


減価償却費が全額損金算入できるから,利益が減るものの,
その分税金も減って,キャッシュ・フローが増えることで,
設備投資に回せるなどというのは,あくまでも一般論。


各企業の特徴をよく分析しないと,
そのメリット・デメリットは分からないはずだ。
ましてや,単純に,利益が減ったからこの企業がダメと
短絡的に決めてしまうアホ投資家の存在も心配されている。


個人投資家が多くなったのは結構なことだが,
本当に成熟した株式市場の形成には会計と税務の
仕組みを知る必要がある。平成19年度税制改正が,
その契機となれば,幸いなことだ。



| 企業会計・情報開示 | 09:27 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
「関連当事者との取引に関する注記」
3月期決算の会社で経理に携わっている人であれば,
今日からが本格的な業務のピークになるはず。
私は1月からずっとダラダラ仕事を続けていたので,
ここから一気に力を吐き出すことができるのか不安だが,
とにかくやるしかない。


本当はこんなブログ書いている暇はないんだけど(笑),
せっかく再開できたんだから,苦しくても続けるつもり。
一度止めると,復活させるのって大変だから。


ところで仕事でずっと悩んでいることがあって,
それは新会社法における計算書類等の記載についてである。
今回,個別注記表が導入されたのが特徴といえる。
旧商法のBS,PL注記よりも,証取法ベースを意識して
より踏み込んだ内容になっている。


大会社(会計監査人設置会社)では,
注記表12項目についてフル開示が必要になるが,
この中で特に悩みの種になっているのが
「関連当事者との取引に関する注記」である。


連結財務諸表上は全て相殺されるから見えないが,
企業グループの場合,関係会社間同士の取引は多い。
これを全部開示しろってなったら,そりゃ大変よ。


証取法ベースの話になるけど,一応損益計算書で10%,
貸借対照表で1%という重要性の基準はあるけど,
それを検証するのが手間だったりする(苦笑)。


そもそも,法務省では「一般の取引」は開示しなくてよい,
との見解を当初示していたんだけど,会計士側が
すごく慎重になっていてね。2月に日本経団連が
計算書類を含む業報告などの「雛型」を発表したが,
これがまた証取法ベースになっていて,
あたかも「一般の取引」も開示するような中身になっていた。


これで会社も会計士もかなり混乱してしまってね。
法務省が不要と言っているのに,なんで面倒なことして
複雑な開示をしなきゃなんないのかって。


私は以前,有価証券報告書を作っていたからわかるけど,
関連当事者の部分って,元データを集めるだけでも大変。
だって,役員や主要株主の取引まで調べる必要があるから。


ただ,有報の関連当事者では,連結消去した会社の部分は
開示の対象から外されているから楽だった。
ところが,子会社単体になると,親会社,兄弟会社など,
いろんな取引が出てくる。


ここ2ヶ月ぐらい,会計士とずっと調整を続けてたんだけど,
今日の段階になってもどこまで開示するか決まらない状態。
来週には計算書類を作成しなきゃならないから,
もう時間がない。昨夜は会社の最終方針案を作って,
今日,経営層に説明した後,会計士に見てもらうことにした。


ここは多くの会社で悩んでいることなんじゃないかな。
特に旧商法だけで,証取法の世界に慣れていない人は,
例えば税効果会計の注記にしたって,ちょっと戸惑うはず。


雑多な業務が多い中で,検討事案が出てくると本当に面倒だ。
あと2週間は決算業務で相当ピークがたつけど,
その後,申告書の作成とか株主総会もあるし,
落ち着くのは6月下旬。すかさず7月から第一四半期決算。
8月まで体がもつのかな。



| 企業会計・情報開示 | 10:06 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
個別決算における関係会社株式の評価損
本日も仕事。もうどうなってんのかね。
音楽なんて全然聴いてないし,映画も観ていない。
というか,DVDプレーヤーが先月,壊れちゃってさ(苦笑)。
トレイが開かなくなって,無理にディスクを出そうとしたら,
トレイのカバーが取れちゃってね。
そしたらディスクを読み込まなくなっちゃった。


特殊な改造プレーヤーだから,代用品はない。
うーん,「次」のが出るまで,音楽は聴けないってことかな。
まあ,仕事が忙しいからしばらくはこのままでいいのだが,
ゴールデンウイークまでには解決策を考えたい。


で,今日の朝は,会社でゆっくり新聞を読んでいたんだけど,
ちょっと職業柄,非常に気になる記事があってね。
富士通は昨日,2007年3月期の単独決算で,
3500億円の関係会社株式評価損を計上すると発表した。


日立製作所も先週16日に,米国関係会社に絡んで,
1800億円の評価損を計上すると発表していた。
立て続けになぜ,同じようなことが起きるのか。


会計に詳しくない人は,意味がサッパリ分からないと思うが,
簡単に言えば,出資した会社の価値が払ったカネの分より
かなり下がったため,それを財務諸表に反映するというもの。


例えば,10億円出資して完全子会社を設立したとして,
その後,その子会社が赤字を垂れ流して,
15億円の累積損失を抱えたとするでしょ。


出資した10億円というのは,親会社からみれば,
関係会社株式あるいは長期投資となり,
子会社からみれば資本金となる。


資本金10億円で,15億円の赤字を積み上げると,
その差額5億円が会社の価値のマイナス分。
この状態を業界では「債務超過」という。
債務超過って会計の正式な用語じゃないからね。


子会社が債務超過の状態になっていることは
実はよくあること。先行投資として,
多額の減価償却費や研究開発費が必要な会社は,
当初5年間ぐらいは,単年度赤字が続き,
債務超過に陥ってしまう。


で,子会社側の会計処理は特に問題がないのだが,
親会社側では関係会社株式の評価損を計上すべきかどうか,
検討する必要があるのだ。


ただ,連結決算が主流となった現在,
この問題はあまり語れることがなくなってきた。
なぜなら,連結すると子会社の剰余金を組み込むため,
債務超過の状態ならば,そのまま連結剰余金を
マイナスするから,結果的に評価損を計上したのと
同じような結果が得られるのである。


実際,日立も富士通も,個別決算の業績予想は変更したが,
連結決算の業績予想は変更していない。
これは,損失自体は既に連結財務諸表に反映されているため。


親会社で評価損を計上した場合,
関係会社株式を落として,評価損を計上するわけだが,
連結仕訳でいったん戻してから,
また子会社財務諸表を合算することになり,
手間になるという事情もある。


「連結で反映になるんだからいいじゃん」みたいな
風潮が会計士監査の中であったことは確かなのね。
でも全く影響がないわけではない。というのは,
評価損を計上すれば,親会社の剰余金が減るわけだから,
配当原資も減少するためである。


日立も評価損計上に合わせて,減配することを発表。
富士通はファナック株式の売却益などを繰り出して,
従来の配当を維持するようだが,いずれにしても
単独決算で評価損を計上すると,配当に影響がある。


で,何で今になってこの問題が浮上してきたかといえば,
三洋電機のせいなんだよね。2月23日に判明したことだが,
証券取引等監視委員会が,三洋電機の2004年3月期決算で,
関係会社株式の評価損を低く見積もっていたとして,
調査を開始したというのだ。


三洋では,2005年3月期と2006年3月期に,
合計2000億円程度の評価損を個別決算で計上しているが,
証取等監視委では,2004年の段階で計上すべきものを,
その後に先送りしてた点を重視しているようだ。


三洋がこのような会計処理を行った背景は不明だが,
おそらく配当維持にこだわったというのが業界の見方。
三洋はいまだに経営のゴタゴタが続いているけど,
同族経営のいい加減なところがあったんだろうね。


じゃあ,会計士はこの処理をどう見てたのってなるけど,
そしたら当時の会計監査は,旧中央青山(笑)。
現在のみすず監査法人が解体を決断したのも,
日興コーディアルグループに続き,三洋の問題が
明るみになって,トドメを刺されたと言われている。


個人的な考えでは,連結メインの時代になって,
しかも新会社法を策定する議論の中で,
連結ベースの配当なんて話があったわけだから,
関係会社株式の評価損なんてあんまり意味が無いと
思っているけどね。


社外流出が問題だとするなら,旧商法の問題だし,
となれば,証取等監視委が出る幕じゃないのかなって。
でもこの動きに,監査法人はピリピリしてるんだろうね。
日立と富士通が立て続けに関係会社評価損を計上したのも,
明らかに会計士の指導があったからではないか。


ちなみに,日立も富士通も,監査委嘱者は新日本監査法人。
私のトコでも,ちょっとヤバいかな(苦笑)。



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