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〜 大気汚染は地球の日傘
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宇宙は何でも知っている
本日の日本経済新聞朝刊にちらっと掲載されていたが,
「ミュー粒子」を使って,建築物の設計偽装を暴く,
という試みが今年の夏から始まるようだ。


ご存知のとおり,宇宙からは放射線が降り注がれている。
我々は常に,その放射線の“被爆”を受けているが,
微量のため,人体への影響はないとされている。
宇宙の放射線だけではなく,地下や空中からの被爆もあり,
細かいことを気にしていたら生きていけない。


さて,宇宙からの放射線が地球の大気中に届いたとき,
ミュー粒子という素粒子の一種が大量に作られる。
地上には1平方cm当たり1分間に1個程度届くとされる。


ミュー粒子の最大の特徴は,類稀な透過性にある。
厚さ1キロメートルの岩盤でも簡単にすり抜けるという。
地上にいる限り,ミュー粒子から逃れることはできない。


ミュー粒子の性質を使うことによって,
人間の目では観察不可能な場所も見ることができる。
東京大学地震研究所の研究グループは,昨年の春,
北海道にある昭和新山の溶岩の通り道を,
ミュー粒子を利用して,視覚化することに初めて成功した。


昭和新山は最初,屋根山という台地状の山が隆起し,
その後,溶岩ドームという新しい山が成長したとされる。
つまり,“二重構造”をした山なのである。


なぜ,このような形状になったかは諸説があるものの,
溶岩ドームの下部構造は直接調べることができなかった。
つまり,最初にできた屋根山の溶岩の通り道が,
どのようになっているかは想像の世界の話だった。


ところで,溶岩は密度が高いためミュー粒子が,
周囲のほかの物質よりも透過しにくいという。
そこで,名古屋大学が開発した「原子核乾板」という,
特殊なフィルムを使って,北海道大と共同で,
昭和新山の南側麓にこの写真乾板を置いて観測。


この観察により,昭和新山のマグマの通り道の「火道」は,
直径が約100メートルの大きさであることが分かり,
昭和新山内部における溶岩の密度分布が分かったという。


ミュー粒子を使えば,他の火山の構造も分かってくるし,
物質の密度によってミュー粒子の運動が変わるならば,
他への応用例も広がってくる。
その1つが建築物の内部を透かして見ることだ。


木造の建物の場合,時間とコストはかかるものの,
完成後であっても,内装材を剥がして構造体をみれば,
設計どおりの建物かの確認は可能である。


しかし,鉄筋コンクリート造の建物の場合,
一部を破壊してコンクリートの厚み,
鉄筋の数量や太さ,本数などを調べる場合もあるが,
構造体の強度を落としてしまうため,好ましくない。


通常は超音波などを使って非破壊検査をするが,
損傷を受けている部分の発見はできるものの,
鉄筋の形状等を確認することは難しかった。


ミュー粒子は,コンクリートは簡単に通り抜けていくが,
その際,コンクリートより密度の高い鉄筋にぶつかると,
進路がわずかに曲がるという。


鉄筋コンクリート造のサンプル体で調べたところ,
鉄筋の本数やピッチ,太さが分かり,
さらにコンクリートの厚さも分かるそうだ。


この検査方法の正確性が実証され,
さらに通常の検査で利用されていけば,
続々とインチキ建築物が見つかったりしてね。
まさに「宇宙は何でも知っている」というわけである。



| 住宅・建築 | 17:56 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark | 昨年の記事
デパオクと屋上緑化
妹が最近,日本橋の高島屋へよく行くという。
カネもないのに何をしに行くのだろうと思いきや,
職場から近いので,物産展などをのぞきに行くようだ。


高島屋では昨日まで「大九州展」を開催していたが,
お昼に奮発(?)して,鹿児島のお弁当を買ったそうだ。
職場で食べるのも殺風景と思ったのか,
高島屋の屋上へのぼって食べてきたようだが,
そこが庭園であることを,妹は初めて知ったという。


百貨店(デパート)の屋上を,通称「デパオク」と呼ぶ。
「デパチカ」にひっかけた言葉なのだが,
一般にはあまり浸透してないかもしれない。


ところで,デパオクがひそかに変貌している。
昔のデパオクのイメージといえば,
家族連れが乗り物の遊具等で遊ぶ姿だろう。


そんな昔ながらのデパオクの遊具は廃れた。
少子化で,遊戯具の利用が少なくなったのか,
それとも最近のお子さまはハイテク遊戯に慣れており,
子供騙しのアナログ的な遊戯具では満足できないのか。


そもそも家族連れが百貨店へ行くことが,
少なくなったのだろう。今の時代,家族連れには,
近場のSC(ショッピングセンター)の方が便利だ。
その中にはゲーム機など遊ぶ器具の種類が多く,
わざわざ百貨店へ行く必要性もなくなってきた。


百貨店がデパオクのリニューアルを迫られたとしても,
なぜ屋上庭園になるかといえば,
ヒートアイランド現象の進行が影響している。


ヒートアイランド対策の1つとして緑化がある。
そして,ビルディングなどの屋上は従来,
コンクリートやタイルがむき出しであり,
「蓄熱体」となって気温の上昇を助長してきた。


それよりも問題なのは,ビルそのものが温まり,
空調の効率を落としてしまうことである。
屋上に限らず,壁面などを緑化すれば,
少ないエネルギーで空調を運転することができる。


かつて私も,屋上緑化の効果をナメていた人間である。
拙宅は,ビルなどと同じように陸屋根になっているが,
この構造だと,屋上の真下の部屋が相当暑くなる。


拙宅の屋上は3階部分に相当するが,
2階との間には断熱材と軽量アスファルトを敷き,
その上にFRPによって全面防水を施しているが,
住んでみて,断熱材はほとんど効果がないことを実感。


FRPや軽量アスファルトが蓄熱体となってしまうため,
その手前で熱を除去するしかないのだ。
ところで,一般の住宅で陸屋根を採用することは少なく,
勾配屋根の場合がほとんどだろう。


勾配屋根の構造では,「屋根裏」のスペースが生じる。
通常は屋根裏が断熱空間となって,
階下への熱の影響を断絶しているのである。
だから,屋根からの熱に気を使う必要はない。


家を建てた後になって,屋上緑化について調べたけど,
言い訳になるが,当時はまだ品数が少なかったし,
施工実績のある業者もほとんどなかった。


屋上緑化のハードルは意外と高い。
コスト面もさることながら,
品種によってはすぐに枯れてしまったりするし,
水遣りなどの手間もかかったりするのである。


メンテを全て委託できる金持ちなら話は別だが,
個人宅で屋上緑化はまだ時期尚早と言えるだろう。
市場全体が広がって,コストが下がるまで待つしかない。


一方,企業所有の建物では,
設備投資と考えれば,それほどの出費ではない。
また,空調の電気代の削減が見込めるならば,
屋上緑化もある程度リターンに見合った投資といえる。


そこで,百貨店などにも屋上庭園が広がってきたのだ。
東京都でその先駆的となったのが玉川高島屋だ。
玉川高島屋は,2003年9月にリニューアルオープンしたが,
その際,SCとしては都内最大規模の屋上庭園を開設した。


単なる植樹ではなく,果樹やハーブなどの草木を植え,
また,約50種類のバラがある「ローズガーデン」も設置。
緑化事業に限らず,「見て楽しむ施設」を作ったわけだ。


そして日本橋高島屋でも2005年4月,
「トップアイランド」と名付けられた屋上庭園を開設。
単なる庭園ではなく,ドッグパークなどもあり,
買い物客の利用に限定しない憩いの空間となっている。


高島屋に触発されたか,2006年6月,伊勢丹・新宿本店が,
「アイ・ガーデン」と名づけた屋上庭園をオープン。
屋上に遊具が置かれていた頃に比べて,
夏場の地表の体感温度は10度近く下がったという。


アイ・ガーデンの建設費用は2億5000万円もかかっており,
売上に直結しない改装コストではあるものの,
地球温暖化対策のアピールと割り切っているのか。


六本木ヒルズのように,最新の大規模ビルでは,
最初から屋上庭園を備えている施設が多い。
コスト面を考えれば,最初に作った方が安いからだ。


問題は,既存の建物だろう。
東京23区の緑化可能な屋上面積では,
まだ80%以上が緑化されないままになっている。


セキュリティ上,オフィス専用ビルでは難しいだろうが,
集客を目的とする商業ビルなどでは,
積極的に屋上緑化を進めていってもいいはず。


デパオクの屋上緑化が始まったのが,たった数年前。
今後,この動きが広がっていくことが期待される。



| 住宅・建築 | 17:41 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark | 昨年の記事
200年住宅(8)
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律案」
(以下,「長優住宅普及法案」)


これが超長期にわたって循環利用できる住宅,
いわゆる「200年住宅」を普及させるための法律案の名称。
当初は「長期耐用住宅」という仮称が使われていたが,
成案では「長期優良住宅」へ変更されていた。
ま,どっちでもいいんだけどね。


法案の所管官庁である国土交通省は今月15日,
長優住宅普及法案の内容を固めて,与党へ提出。
了承が得られたことから26日に閣議決定を行い,
同日,通常国会へ提出されている。


メディアではほとんど報じられなかったが,
そんなにニュースバリューがないのだろうか。
すごく身近な問題だと思うんだけどさ。
私も26日にブログで書きたかったけど,
ちょうど気分が乗らなかった時期だったんでね。


さて,法律案の中身は判明したものの,
私が一番知りたい「認定要件」については,
具体的な基準は明らかにされなかった。


詳細な認定基準は法案成立後,
国土交通省令で定められる見通しとなっている。
その意味でやや肩透かしを食わされた感じだが,
まずは法律の成立を急ぐということなのだろう。


認定要件の概要は,以下の7つである。

1.構造躯体の耐久性
2.耐震性
3.内装,設備の維持管理の容易性
4.変化に対応できる空間の確保
5.長期利用する構造躯体において対応すべき性能
6.住環境への配慮
7.計画的な維持管理


1〜4の内容については,特段説明はいらないだろう。
当然,具体的な話になれば難しい問題を抱えるが,
「理想」の形としては簡単にイメージできるものである。


5番目については,ちょっと分かりづらいか。
これは,断熱性能等の省エネ性能が確保されていることと,
また,将来のバリアフリー改修に対応できる仕様であること,
という解説が一般にはなされている。


しかし,省エネ性能については,
なかなか建築主の理解を得られないのではないか。
「寒い家だって,長持ちするだろう」という,
意見が出てきたっておかしくはない。


これも説明は長くなるので,別の機会に譲るが,
日本人のライフスタイルの変化が前提となる。
今,囲炉裏で暖を取る人が少なくなったのはなぜか?
と考えてもらえば分かりやすいかもしれない。


また,バリアフリー改修が対応可能な仕様というならば,
最初からバリアフリー対応にすれば話は早いのではないか。
「改修が前提」だから費用は後から出てきても構わない,
という話とはちょっと違うような気がする。
突然,脳梗塞で倒れ,半身不随になった場合など,
オモチャの住宅のように対策が打てるものでもない。


6番目もちょっと分かりづらいかもしれないが,
簡単に言えば「景観を守る」という意味である。
楳図かずおの「まことちゃん」ハウスみたいなものは,
長期優良住宅としては認められないということだ(笑)。


これは反論があるかもしれない。というのは,
耐久性や「住みやすさ」とは直接関係ないからだ。
特に,自分が気に入っているデザインであれば,
長く住みたくなるかもしれない。


しかし,「街」の単位として考えた場合,
1つでも妙な住宅が存在したのなら,
他の人が長くは住みたくなくなるかもしれない。


ただ,この話を拡張していけば,
ヤクザが住んでいるから,住みたくない,など,
「人」の問題も絡んでくるため,
もう少し議論があっていいかもしれない。


7番目は,長優住宅普及法案の1つの目玉であり,
「点検・補修の計画策定」と,「住宅履歴情報の蓄積」を,
義務付けるというものである。特に前者については,
マンションなどで実施されているが,
後者はいわゆる「住宅履歴書」と呼ばれるもので,
家の「カルテ」の保存を義務付けるというものである。


人間の体でも,変調が出てきたとき,
過去のカルテが原因を突き止める場合もある。
住宅も同様で,特に改修を前提とするならば,
設計などもスピーディーになるし,
なによりも強度の確保が保証されやすい。


税制関連法案ばかりに注目が集まり,
長優住宅普及法案を真剣に論議されるか疑問だが,
5番目と6番目については,国会審議の中で,
もっと具体的な中身をあぶりだして欲しいもの。


ま,アホ政治家に期待してもしょうがないか。



| 住宅・建築 | 19:27 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark | 昨年の記事
200年住宅(7)
2005年3月20日に発生した「福岡県西方沖地震」。
地震の規模はマグニチュード(M)7.0,
最大震度は震度6弱で,死者は1人だった。
個人的な印象では,揺れのエネルギーの割には,
被害は最小限に抑えられたのではと思っている。


2004年発生の「新潟県中越地震」では,
地震の規模がM6.8で,最大震度は震度7,
死者数は後々増えていき,計60人を超えたが,
地震直後でも20人以上が亡くなられた。


被害の大きさは地震の規模だけではなく,
地層・地盤の性質,震源地からの距離,
揺れの周波数成分などに影響されるため,
一概に比較はできないのだが,
本来なら,同じような地震の規模ならば,
人口密度が多い都市の方が被害は出やすい。


しかし,福岡県西方沖地震はなぜ被害が少なかったのか?
これは地層・地盤が関係していると思われる。
同じ都市型の地震として阪神・淡路大震災と比較してみる。


阪神大震災の地震規模はM7.3で,最大震度は震度7。
近年では最大級の地震エネルギーであったが,
1つ気になるのは大きな被害を受けた地域である。


阪神大震災(兵庫県南部地震)の震源地は,
淡路島北部の野島断層付近であった。
地面を大きく切り裂かれた断層の映像は驚かされたが,
震源地直近の淡路島も確かに大きな被害を受けた。


しかし,実際には震源地から海を越えた神戸市でも,
震度7を記録し,甚大な被害を受けていたのである。
神戸市といっても被害が集中したのは,
六甲山地と海沿いの間約1キロの帯状地域であった。


勿論,人口密度が違うため,
淡路島よりも神戸市の方が被害が出やすいのは事実。
しかしそれを差し引いても,
神戸市の特定地域が大きく揺れたことは気になる。


専門家は,その原因を沖積層だと指摘している。
沖積層とは,約2万年前より以降にできた新しい地層で,
平野に大規模な河川が流れている場合,
その下流において,砂や泥が蓄積された層である。


最も強い地盤は岩盤層などだが,
逆に最も弱い部類に入るのが沖積層だ。
地盤の強さを示す指標としては「N値」がある。


N値とは,標準貫入試験で求められる数値のことで,
約63.5グラムのハンマーを約76cmの高さから,
銅製のボーリング棒を地面へ向けて落下させ,
それが土中へ30cm打ち込むのに要する回数がN値となる。


つまり,打ち込む回数が少なくても地面深くへ到達すれば,
それだけ地盤が弱いことを意味する。
逆に,N値が高ければ,地盤が強いことになる。


ただし,砂質土と粘性土では同じN値でも地耐力は違う。
粘性土の方がN値が低くても,地盤は強い。
砂質土の場合,N値は最低でも10以上は欲しいところで,
理想的にはN値30以上だろう。なお,洪積層であれば,
砂質土でもほとんどN値は30以上はある。


ところが沖積層の場合,N値は1桁にまで下がることもある。
そして多くの住民にとって身近な存在でもある。
例えば東京では,江戸川,中川,荒川,多摩川の下流周辺は,
ことごとく沖積層が広がっている。


しかも沖積層の厚みが重要だ。沖積層が厚くなればなるほど,
地盤が弱くなっていく。東京のそれら河川沿いでは,
沖積層が20メートル以上の地域が大半とされるが,
最大では70メートルにまでの深さまで沖積層が続くという。
沖積層の厚さが40メートル以上の地盤はかなり危険とされる。


神戸の市街地は,六甲山を源とする複数の河川が流れ,
扇状に堆積していき,沖積平野を作り上げていった。
この地層が地震の被害を大きくしたと考えられるのである。


東京都心部は関東大震災以後,大規模な地震の経験はない。
関東大震災でも沖積層が厚い地域は大きな被害を受けた。
同規模の地震があれば,再び被害は大きくなるはず。


福岡県が西方沖地震で被害が少なかったのは,
沖積層が薄かったからではないか。
福岡平野には一級河川が1つもないことから,
砂や泥の堆積が比較的少ないのかもしれない。


ただ,福岡県の場合は珍しい例かもしれない,
一般には平野部は沖積層が広がることが多い。
ところが,日本の大都市は基本的に平野部に位置する。


商業地などが中心となっている場合も多いが,
近年は超高層マンションなどが都心部に林立している。
地価下落と都心回帰の傾向とあいまって,
近年,東京では人気となっていた超高層マンションだが,
地震に対する備えは大丈夫なのだろうか。


勿論,N値が低い軟弱地盤でも,
地盤改良や基礎杭を打ち込むことによって,
地耐力を確保することが可能。
また,免震構造も有効な手法である。


どんなに立派な住宅を建てたとしても,
地盤が崩壊してしまえば,住宅の価値はゼロになる。
長期耐用住宅は,家の価値を維持するための仕様であり,
最も基本的な要素はやはり地盤ということになる。


住宅を建てる場合,地盤調査は当り前の時代になったが,
地盤が沖積層の場合は,慎重に対策を講じることになる。
N値が低すぎる場合や,地下水などの存在によっては
建設価格に相当跳ね返ってくるかもしれない。


沖積層地帯では自分の住宅の地盤を万全にした場合でも,
周辺地域で大規模な火災が発生することで,
延焼の巻き添えを食う可能性もあることから,
やはりリスクは完全に払拭できない。


では沖積層地帯はあきらめて,
いっそ洪積台地に土地を求める考え方もあるが,
例えば新興住宅地の場合,盛り土によって,
地盤が弱くなっていることもありえる。


2004年新潟県中越地震や1978年宮城県沖地震でも,
新興造成地が大規模に崩落したところもあり,
この場合は個々に多少の地盤改良を行っても,
対処しえないことも考えられる。


勿論,盛り土の地点は地盤調査で簡単に分かるが,
あまり細かい条件にこだわりすぎると,
買える土地がなくなってしまうこともある。


そこである程度は妥協が必要になるわけだが,
土地選びはできるだけ慎重に行いたいし,
また少しでも弱い地盤は十分な対策が必要になる。


200年住宅では「うわもの」の話が中心となるが,
まずは地盤からという基本から始める必要がある。



| 住宅・建築 | 09:04 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark | 昨年の記事
200年住宅(6)
ちょっと話を大きく変えて,
コスト度外視で家を作れるとするならば,
どんな形で出来上がるかを考えてみる。


ゼロベースで考えるのは面倒だから(笑),
何かモデルとなる建物はないかなぁ,
と思案したところ,純粋な“住宅”とは言えないが,
東京都の知事公館がいいかなと。


石原慎太郎は先日,知事公館の売却を発表。
1999年に東京都知事に当選して以来,
石原は一度も入居しておらず,
誰も使わなくても毎月30万円の維持費がかかっていた。


石原曰く『ああいうバカな建物を何で造ったのか』と。
建物の性能自体がバカかという意味ではなくて,
建設をOKした青島幸男がおバカだったという意味か?


知事公館は鉄筋コンクリート造で,地下1階地上2階建て。
建物の延べ床面積は1,143平方メートルで,
免震構造を採用している。


総工事費は約12億円。そのうち建物本体の建設費は,
約9億5,700万円だが,ほかに設計・地盤調査費と,
庭園など緑化・外溝工事費を含めると約12億円となる。


古い知事公館を建て替えしたため,土地代は含まれていない。
東京都では今後,土地・建物の資産価値を鑑定するが,
あわせて売却価格は数10億円になる模様。
竣工から10年が経過し,建物の償却は進んでいるものの,
高級住宅地という立地から土地だけでも高額となろう。


敷地面積は2,212平方メートル。平成19年の公示価格は,
渋谷区松涛1丁目で1平方メートル当たりの単価が166万円。
土地だけでも約37億円の価値になる。
これだけの金額で都の財政が良くなるわけではないが,
使わないモノを処分するのは基本といえる。


土地はさておき,建物本体だけで10億円弱っていうのは,
一般人ではまずありえない建て方だろう。
建築坪単価は,3.3平方メートル当たりで約167万円。
RC造の場合,坪単価は一般に70〜100万円程度。


地方の工務店では坪単価50万円以下の業者も存在するが,
大手メーカーを使えば,どうしても高くなってしまう。
それでも坪単価167万円はいかがなものか。


コスト高となった1つの要因として,
免震構造を採用したことがある。
知事公館は,16基の鉄筋コンクリート柱で支えられているが,
それぞれの柱の下に,鉄板に挟まれた直径80cm,
高さ60cmの免震装置を設置し,これにより,
最大65cmの揺れ幅に対処できるという。


建物本体は揺れを吸収できても,
地中の配管が破断してしまう恐れがあるため,
それら配管は地下に宙づりにされている。


免震構造だけで,設計費を含め5,000万円ほどかかったそうだ。
ちなみに設計は日総建で,施工は旧住友建設・ミトモ建設JV。
ゼネコンが作る「家」なので高価格もやむを得ないか。


なお,住宅とはいっても,応接室や会議室などが多く,
私邸部分は2階段の4LDKで,面積は256平方メートル。
一般のマンションに比べれば3倍ほど広いものの,
一戸建ての床面積と考えれば,それほど広くはない。
拙宅とはあまり変わらないし。


RC造+免震構造とういことで,
構造躯体に関しては文句がないだろう。
柱の太さや壁の厚みが分からないし,
実際のコンクリート打設の状況も分からないから,
本当に堅牢かどうかは断定できないけど,
施工監理が十分だったとすれば,
長期耐用住宅の理想的な構造といえる。


ただ,免震構造を含めて坪単価100万円以下にならないと,
なかなか一般人も手が出にくい。
そもそもRC造を選択する施工主も限られている。


本来であれば信頼できる設計事務所に,
設計・施工監理をお願いできれば理想なのだが,
これもコスト的な問題で断念する場合が多い。
特に,土地を新規に取得する場合はまず無理。


理想的な住宅単価を見てしまうと,
やはり大手住宅メーカーのプレハブへ,
消費者が流れてしまうのもやむを得ない。
ただ,もう1つ上の価値を提案できるメーカーはないものか。


本当に安心な住宅となりうるには,
設計の余裕度を持つのが理想的。
コストギリギリで仕上げようとすると,
どこかに無理が出てくるもの。


中越沖地震で被害を受けた東京電力・柏崎刈羽発電所。
現在,設備への影響を調査している段階だが,
設計想定を大幅に上回る揺れに襲われた。
特に1号機は想定の2.5倍の強い揺れを受けた。


それでも原子炉圧力容器などの主要設備にかかった力は,
許容範囲内で最大でも90%程度だったという。
東京電力では,「設計上の余裕が大きかった」
ことが設備への影響を逃れた要因としてあげている。


原発の建屋は,地下岩盤まで何十mもパイルを打ち込み,
その上に基礎を作って建てられている。
よほどの軟弱地盤でない限りありえない方法だが,
それでも原発などの場合は,不安を消し去ることはできない。


コストとの兼ね合いの中で,
どこまで設計の余裕を持たせるかが,
200年住宅となりえる1つの要素かもしれない。



| 住宅・建築 | 17:09 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
200年住宅(5)
前回の話のまとめになるが,
地震に強い家を作るには,
まずは地質調査を行い
軟弱な地盤の場合は補強する。


その上にしっかりとした基礎を作り,
できれば免震システムを取り入れて,
建築基準法で定めた施工の建物にする。


非常に単純なことだと思うのだが,
では,以上の条件を満たせば,
200年住宅となりえるのかと言えば,
実際にはそうならないかもしれない。


構造物である以上,経年劣化は避けられないわけで,
劣化が進行しても十分な強度を持つには,
メンテナンスで劣化を食い止めていくことと,
建築当初から,例えば柱を太くしておくなど,
十分な余裕度を持たせておくことが必要だろう。


少しでも安く仕上げたいという心理もあって,
今までの住宅は設計余裕がなかったと思う。
超長期住宅ローンの提供が前提だが,
新規の長期耐用住宅の取得にあたっては,
十分に資金を確保することによって,
高額の支払いを覚悟しておくべきなのだろう。


ところで,上記のように万全に住宅が完成しても,
もう1つ気になることがあって,それが立地条件である。
人間は古来,海や川の近くを生活拠点してきた。
物流の面で有利だからだ。


しかし,川は大雨などによって氾濫する。
その場合,川沿いにある住宅は浸水が避けられない。
建物そのものにダメージを与えないにしても,
「家の価値」は大きく落ちてしまう。


地球温暖化によって海面上昇が続くとすれば,
海沿いでも高潮の被害が頻発化する恐れもあり,
水に近い立地はリスクを抱えることになる。


では,山はどうか?
日本では毎年必ず台風被害が発生するが,
山間部に建てられた家屋は損壊を受けてしまう。
後背に崖がそびえる土地に建つ家屋や
崖の上に建てられている家屋を見るだけで,
私などはとても住めそうにないと思のだが…。


祖先から受け継いだ土地を守るのも大事だろうが,
住宅にふさわしい立地を選ばないと,
どんなに立派な建物を作っても意味がない。


地盤のことを考慮すれば,
やはり山を削って造成した高台が理想的。
ただ,造成費用が土地代に上乗せされるため,
どうしても値段は高くなってしまう。


土地は決して安い買い物ではないから,
少しでも安いところを探してしまうわけだが,
長期耐用住宅を建てるのであれば,
自然災害が少ない立地がふわさしいはず。


さらに理想をいえば,住環境の良さだろう。
防火を考えれば密集地は避けたいし,
騒音を考えれば幹線道路沿いは避けたいし,
環境を考えればゴミ焼却場などの近くは避けたい。


あまり理想の立地を求めると物件が限られる。
だが,長期耐用住宅の場合,一生住むのも良いが,
途中で売却することも選択肢として有力。
同じ土地に住み続けるだけが人生ではない。


売却を前提とすれば,家というものは,
土地・建物だけの価値ではなく,
住環境を含めて値段が決まるはずであり,
トータル面での資産価値を持たせる必要がある。


初期コストはかかるのかもしれないが,
200年住宅の普及を図っていくうえで,
付加価値を十分に含んだ長期耐用住宅を,
多く供給していくことも重要になる。
質の高い中古市場があってこその200年住宅だから。



| 住宅・建築 | 10:52 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
200年住宅(4)
本日,阪神・淡路大震災から13年目を迎えた。
日本は地震大国であり,200年住宅を目指すのであれば,
何度も発生しうるであろう大地震に耐える必要がある。


長期耐用住宅の設計を考えるうえで,
阪神大震災で倒壊した家屋の例を見てみれば,
地震に強い家の作り方も見えてくるかもしれない。


一般住宅の躯体構造は,種類はいろいろあるが,
大手住宅メーカーが採用する方式は,
・木造軸組工法(在来工法)
・木造枠組壁式工法(2×4)
・木質系または鉄骨系プレハブ工法
の3つの集約できるだろう。


地場の工務店では在来工法が多い。
昔からある工法でもあり,今までは身近だったが,
最近の大手ではプレハブや2×4がやや優勢か。


最大手の積水ハウスと大和ハウスが鉄骨系プレハブで,
これに続くミサワホームは木質系プレハブなため,
上位3社がプレハブ工法を採用していることになる。


大手がプレハブ工法を好むのは,
工場生産により現場の施工のミスが少なくなることと,
人手が少なくてすむためローコストに仕上げるため。


設計と施工の乖離が少なくなるため,
いわゆる欠陥住宅を生み出しにくく,
耐震性や耐火性を十分確保しやすくなる。
結果的に,地震に対して強い住宅になっている。


また,2×4も部材の規格化によって,
品質のブレが少ないことと,かつて規制が厳しかった分,
釘を打つピッチなど細かいところまで工法が定められ,
面で支える構造もあいまって,
これもかなり耐震性を確保している。


では在来工法は地震に弱いのか?
実はそうではないことが,阪神大震災で証明された。
少なくとも1981年に改正された建築基準法を満たせば,
在来工法でも全半壊を逃れた家屋がほとんどだった。


地震の後,木造住宅が倒壊している映像が流されたが,
元々,日本では在来工法が多いということもあり,
さらに古い家屋はことごとく壊滅したために,
「在来工法は地震に弱い」という印象を与え,
実際,その後プレハブ工法採用のメーカーが注目された。


しかし,阪神大震災で露になった事実というのは,
古い設計の住宅は議論から外すとして,
問題は業者の施工にあるということだった。


全半壊した家屋の中には,
比較的新しく建てられたものもあったという。
壊れた原因は極めて単純だ。手抜き工事だ。
いわゆる「欠陥住宅」だったためである。


いまだに全国で絶えない欠陥住宅だが,
震災後,性能保証住宅の検査担当者が確認したところ,
新築建売物件の木造住宅の場合,
半数以上に何らかの構造的欠陥が見つかったという。


構造的欠陥というか,ごく非常に単純な手抜きだ。
筋交いが金具でしっかり固定されていなかったり,
基礎と土台を結びつけるアンカーボルトの設置数や,
場所が構造計算の必要分を満たしていないなど,
信じられない杜撰さが明るみとなった。


これは大きな地震が発生して壊れてみないと,
外からは見つからない手抜き部分のため,
木造軸組工法の建売を買った住居者は,
地震に対してかなりリスクを負っていることを意味する。


木造に限らず,鉄筋コンクリート(RC)造も,
阪神大震災で全半壊した例もいくつかあった。
地震に最も強いとされるRC造でも,
壁配置のバランスの悪い設計や,
コンクリートの低品質または鉄筋量の少なさなどから,
壁が崩れて倒壊したというのだ。


同様に,軽量または重量鉄骨造(S造)でも,
鉄骨の溶接で,周囲をつけるだけのすみ肉溶接など,
施工不良によって壊れた家もあった。
つまり工法は関係なく,「人」の問題といえる。


メーカーは大々的な広告などは自粛しているが,
プレハブ工法の優位性を商売文句にしていることは事実。
プレハブの場合,人による手抜きが起き難いためだ。
確かに比較すれば安心度は高いと思うのだが,
それだけで「地震に強い家」にもならない。


建物の構造躯体が損傷を受けなければ,
住居人の生命が必ずしも守られるわけではない。
日本建築学会の調査報告書によれば,
阪神・淡路大震災で,最も多かったのは怪我の原因は,
家具などの転倒落下であり,半数近くを占めた。


寝室,特に和室で一番怖いのがタンスだろう。
ねじ止めなどの補強がなければまず押しつぶされる。
書斎などでは本棚が危険物となる。
また,リビングでもダイニングボード類が危ない。


収納の必要性から,それら家具類は欠かせないわけだが,
勿論,それらは全て撤去するという方法もある。
拙宅がその方式を採用しており,
リビングはローボードと液晶テレビしかないため,
それが落下するぐらいのリスクしかない。


寝室は備え付けのクローゼットのためタンスは不要だし,
食器類も備え付けのダイニングボードのため,
建物自体が壊れない限り,安全ということになる。


ただ,これは苦肉の策といえる。
収納を犠牲にする必要があるためだ。
収納に限らず,雑貨類を陳列したい場合は,
どうしても家具類を置きたくなるもの。


そこで登場するのが免震構造である。
現行建築基準法の水準であれば,
構造躯体は,阪神大震災程度の地震は耐えうるはず。
つまり,「耐震」はクリアできる。


しかし,躯体の中の衝撃を吸収するには,
「免震」の仕組みが必要になってくる。
実は,免震が知られるキッカケとなったのが阪神大震災。


神戸市に「松村組」の技術研究所があって,
阪神大震災の際,免震構造ではない管理棟では,
加速度計は965ガルを示したという。


一般に600ガルを超えると家屋の倒壊が進むとされる。
しかし,免震構造の研究棟では272ガルだったという。
管理棟と研究棟は両隣という位置関係だったことから,
免震構造が揺れを1/3まで和らげたことになる。


それまで日本に「免震住宅」がなかったわけではない。
2×4工法を主力とする三井ホームでは,
1989年に業界に先駆けて積層ゴムを使った免震住宅を投入。
建物と地盤を切り離して,その間に免震ゴムを挟んで,
地盤の揺れを建物に直接伝えない方法だった。


しかし,積層ゴムによる免震は,効果はそれほどない。
そこで三井ホームでは阪神大震災以降は,
ボールベアリング支承とオイルダンパーによって,
制震する免震システム「M-400」を導入している。


これは,地震発生時に,ボールベアリングが,
すり鉢状の受け皿を転がって水平方向に地震力を低減し,
地震が止まると,重力によってボールベアリングが,
自然に受け皿の中央に戻る仕組み


ただ,実際に免震システムを導入する顧客は少ない。
三井ホームの場合,顧客全体のうち,
免震システムを採用するのは1%だという。
通常,300万円程度上乗せになり,
高価格がネックとなる。


「耐震+免震」は,極めて理想的といえるが,
後は低価格の免震装置の登場が待たれるところか。
しかし,これで全て安心というわけにもいかない(苦笑)。


最も重要で,最も無関心なのが地盤だ。
一戸建てに住んでいる人で,
地盤調査結果を知っている人はどれだけいるのか?


“普通”の住宅業者なら必ず地盤調査を行うが,
これも阪神大震災以降の話ではないだろうか。
同震災で「全半壊ゼロ」を標榜する住宅メーカーだが,
地盤の崩落によって使えなくなったプレハブもあった。


また,比較的安全とされるベタ基礎でも,
不同沈下によって修復不可能となる例もある。
このように地盤と基礎の問題もクリアできないと,
「地震に強い家」の実現はできないわけである。


200年住宅とは簡単に言うものの,
本当に200年存在し続ける家を作るには,
相当なハードルが用意されていると思うのである。



| 住宅・建築 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
200年住宅(3)
スケルトン・インフィル設計の住宅の場合,
インフィル(内装・設備)は後々変更することが前提。
そこに長期耐用住宅の楽しみを見出せねばならない。


人間は時代の流れの中で,住環境の変化を要求していく。
例えば,家族が増えた,減ったというだけで,
間取りを大きく変えてたくなるものだ。


ところで,耐用年数の短い住宅であれば,
耐震補強などを加えた大規模リフォームよりも,
新築住宅を購入した方が面倒くさくないし,
それに新鮮な気持ちで住める,
というメリットを見出すかもしれない。


実際,リフォームも決して安くなるとは限らない。
であれば,資金に余裕があれば建て替えてしまえ,
と思っても不思議なことではないだろう。


「女房と畳は新しいほど良い」と言われることもあり,
何でも新しいものを欲しがる人がいる。
一方,古い方がいいという考えもあって,
これは個々人の価値観によるもの。


リフォームや修繕にも多額の費用が必要になるわけで,
そこで「新しいもの好き」という人の価値観であれば,
新築物件に目が向く心理状態も分からないではない。


実際,間取りを変更したいと思っていても,
柱や梁,または耐力壁など構造躯体の問題から,
自由な変更が不可能な場合もある。
例えば,後から地下室を作るとかね。


もっとも,その場合は「引っ越し」という手段もある。
長期耐用住宅が普及してくることによって,
中古の耐用住宅の市場が広がっていくはず。


そこで,自分の間取りを実現可能な物件を探すわけだ。
市場が広がっていくにはかなりの時間を要するが,
もう1つの問題として,リフォーム費用がある。


中古とはいえ,いくらなんでも水周り設備などは,
前の住民と同じものは使いたくはないもの。
キッチン,バス,トイレなどは一式リプレースしたいが,
その場合の費用が気になるところだ。


現在,詐欺まがいのリフォームも横行しているが,
積算については不透明なものが多い。
設備の価格はメーカーに問い合わせればいいが,
労務費などが不透明なため,妥当な水準が分かりにくい。


中古市場が活性化すると同時に,
リフォーム価格の透明化が重要になるはず。
いい加減な業界体質が改められなければ,
消費者も積極的にリフォームを行わず,
200年住宅構想も絵に描いた餅に終わりかねない。


そして,私が最も気にしているのがやはり価値観。
スクラップ・アンド・ビルドも悪くはない,
という考えが少しでもある限りは,
なかなか長期耐用住宅も現れないのでは?


内装設備を全て取り替えたとしても,
資金的に外壁や外構などの取替えまで無理な場合,
見た目ではどうしても貧相な家に見えてしまう。
外壁の塗り替えだけでも100万円以上はするから,
内外装全部の手入れは無理と考えるべきだろう。


また,内装設備も全てに手が付けるのは難しく,
例えばフローリングの全張替えも思いとどまった場合,
傷だらけの床で暮らすことになる。
そんな環境に耐えられる心構えはあるのか。


200年住宅が受け入れられるかどうかは,
古いものを許容していくという,
精神論的な問題に行き着いていくような気がしている。



| 住宅・建築 | 20:13 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
200年住宅(2)
なぜ今になって「200年住宅」が話題になるかといえば,
昨年春,自民党・住宅土地調査会がまとめた提言から始まる。
長寿命の住宅普及を図ることによって,
住宅取得の家計負担軽減させ,その余剰資金を,
他の消費財の購入に向けて内需を拡大させる狙いがある。
さらに木材の使用量を削減し,環境対策の意味もある。


当時,住宅土地調査会の会長を務めていたのが福田康夫。
自分が取りまとめた提言ということもあってか,
首相に就任してすぐに政策課題として取り入れたわけだ。
そして平成20年度税制大綱に早速反映させたことで,
今後,国民の関心も高まってくるものと思われる。


さて,税制改正の内容だが,税優遇を受けられるのは,
耐久性などで国の認定基準を満たす住宅が対象。
この住宅を「長期耐用住宅(仮称)」と呼ぶ。
今回の通常国会で関連法を整備して,
長期耐用住宅の認定基準を策定する段取りになっている。


ただ,長期耐用住宅の具体的な中身はまだ不明。
スケルトン・インフィルが基本となるのは当然だが,
構造躯体にどこまでの強度を持たせるのか,
また地盤補強なども必要になるのか,
長期耐用の認定基準が気になるところ。


基準を満たせば,長期耐用住宅としての認定され,
これを証明する書類,「住宅履歴書」が発行される。
住宅履歴書を市町村に申告すれば,築後5年間にわたり,
一戸当たり120平方メートル相当分まで,
固定資産税を半減されるという。


一般住宅について固定資産税を半減する特例は,
今までは適用期間が3年間だったので,
長期耐用住宅はさらに2年長く税優遇を受けられるわけだ。
長期耐用基準を満たしたマンションなら,
税優遇の期間はさらに長い7年になり,
マンション業界も税制改正に合わせる形で,
長期耐用の認定を受ける物件を投入する可能性が高い。


さらに,不動産取得税も都道府県に申告すれば,
住宅の課税標準から1,300万円まで控除可能となり,
現行の控除上限(1,200万円)よりも100万円上積みとなる。
細かいようだが,高い物件ほど恩恵は大きいのだ。


ただ,税制の後押しだけでは心もとない。
長期耐用住宅が高価格になってしまっては,
いくら税制の恩恵があっても消費者は手が出ない。
日本の場合,地震大国ということもあるため,
構造躯体の強度をどこまで持たせるのかも,
議論があるところではないか。


住宅メーカーも十分な強度を確保しつつ,
コストを抑制する設計開発も必要になるだろう。
また,キャッシュで全額購入できる人も限られるわけで,
超長期住宅ローンの提供も必要になるはず。


現在の住宅ローンの返済期間は35年が最長だが,
これは30年程度で住宅の価値がゼロになるためだ。
長期耐用住宅の場合,資産価値が保持されるため,
もっと長い返済年数のローンがあってもいい。


例えば,50年ローンなどが開発されれば,
月々の支払額はかなり少なくなるわけで,
20歳代で住宅を取得することも夢ではなくなるかも。
200年住宅を本格的に普及させるのであれば,
民間の知恵とインパクトのあるマーケティングも必要だろう。


長期耐用住宅を取得した場合のメリットはどれほどか?
住宅購入者の資金負担は共同住宅の場合で,
2/3程度にまで減るという試算もある。


東京では大正時代に関東大震災,
昭和初期には東京大空襲などによって,
古い家屋は軒並み倒壊・焼失してきたという歴史がある。


そのため,家屋を長く使うという意識が希薄したのか?
日本でも地方には,500年以上も使用した家屋がザラにある。
今回の税制改正をキッカケとして,
長期耐用住宅が広く普及してくるならば,
日本の住宅業界もリフォーム型への転換が必要になるか。


住宅メーカーにとっては厳しい展開かもしれないが,
新規住宅一辺倒の事業構造では,
財務体力ない工務店など淘汰されていくかもしれない。
それでも国民の利益や環境対策としてのメリットは大きい。
そのような施策を展開するのが政治力である。



| 住宅・建築 | 09:46 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
200年住宅(1)
本題に入る前に,
「スケルトン・インフィル」について説明しておく。
かなり昔に本家サイトでも取り上げた記憶もあるが,
つい最近まで,日本では馴染みがなかった概念である。


住宅は大まかに言って,構造躯体(スケルトン)と,
内装設備(インフィル)の2つに分けられる。
スケルトンは住宅の骨格をなすものであり,
基本的には完成後に手を加えられるものではない。


一方,インフィルは完成後であっても,
構造躯体に影響を与えない範囲で変更が可能。
その変更を一般に「リフォーム」と呼ぶ。


しかし従来はスケルトンとインフィルを区別せず,
「家」という一体化した「商品」が売られていた。
すなわち,スケルトンだけを売る市場が存在しなかった。


一部には,木造一戸建ての軸組みだけを組み上げてもらい,
壁や内装を自分で手掛けるDIYマニアなどは存在したが,
例えばマンション販売で構造躯体だけを売り,
水周りの設備や内装を自分で手掛ける人はいなかった。


建築基準法で「分離販売」が制限されていたためだ。
ところが2002年12月に法律が改正されて,
基準が緩和されたことから,マンション販売でも,
スケルトン・インフィルを分離した商品が供給されてきた。


マンションの場合,間取りは画一的なものが多い。
夫婦2人,子供2人の世帯をターゲットにするため,
3LDKなどのタイプが主流になってしまう。


ところが,独身貴族がマンションを取得する場合,
3つも部屋は必要なかったりするわけで,
その分,リビングを広くしたいという欲求もあるはず。


マンションは通常,鉄筋コンクリート(RC)造であり,
70平方メートル程度の広さであれば,
1つの区画に柱が通ることはほとんどない。


つまり,部屋を遮っているのは可変間仕切りであり,
部屋のレイアウトなど自由に設計できる。
だからスケルトン(空間)だけを売っておき,
間取りは自分たちで決めた方が満足度は高くなるはず。


実はスケルトン・インフィルは,欧米では当たり前の手法。
日本ではなぜ固定的な間取りしか存在しなかったのか。
一番の問題は,間取りについて不満があったとしても,
居住者自ら提案する力量を持っていなかったためだ。


欧米では居住者自身によるDIYが浸透しており,
日曜大工の感覚でリフォームを重ねる住宅が主流。
日本では住宅が「使い捨て」感覚となっており,
実際,建物を除却して更地にしたほうが,
不動産の価値が増すという実態もある。


そのため戦後作られた建物は壊れやすいようにできている。
本来,木造躯体だから耐用年数が短いってことはない。
戦前に建てられた木造住宅は,
100年以上経っても現存するものがある。


太い柱を柱使い,釘を使わず仕口で梁や柱を接合すれば,
経年劣化しにくい構造体を作れる。
ところが仕口などは相当な熟練技となるため,
今のような安易な工法へと流れていった。


簡単に,早く,安く家を建てるには,
構造計算上,ギリギリに細い柱を使って,
釘と筋交いで補強する作り方へたどり着くわけ。


RC造もしっかりと鉄筋を入れて,
良質のコンクリートを使い十分な厚みをもたせれば,
相当な期間はビクともしないはずなのだが,
実際の作業工程では水分を多く含ませるなど,
コンクリート強度を損ねたり,
ギリギリまで壁を薄くしたりするから,
腐食などによって強度は落ちたりする。


結局,スケルトンという概念を持っていないため,
構造躯体を頑丈にして長く使っていく,
という発想にもつながっていなかったのではないか。


しかし,住宅廃材は環境負荷を確実に増す。
「もったいない」だけではなく,
住宅取得者にとってもカネの無駄にもなる。
一度住宅を取得したならば,
死ぬまでその家を使えるのが理想のはず。


ところが,戦後作られたマンションは,
取り壊しが必要な物件がほとんどだ。
私が幼少の頃に住んでいた団地も,
すでに閉鎖されており,間もなく取り壊されるみたい。


RC造なのに30年しか住めない住宅でいいのだろうか。
昨年になって「200年住宅」という言葉が注目されてきた。
2008年度税制改正の目玉にもなっているが,
しばらくはこの問題について書いていきたい。



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